畑を身近に。野菜と作り手とつながり広がる「トラキルート野菜市」

畑を身近に。野菜と作り手とつながり広がる「トラキルート野菜市」

糸島の魅力のひとつとも言えるのが地元産の野菜。
地産地消にこだわり野菜をメインとしたレストランも多く、スーパーや直売所はもちろん食品店ではなくても、ふらっと立ち寄ったお店で採れたての糸島産野菜を売っていることもしばしば。

その中でも特におすすめしたい、とっておきの場所をご紹介します。

農家さんが生み出す気持ちの良い空間で、食の豊かさに出会おう

「トラキルート野菜市」とは

2014年に新規就農し「野菜やトラキ」を立ち上げた山本誠さん、和佳(わか)さんご夫妻が2020年の11月にスタートしたのが「トラキルート野菜市」。

近隣の農家仲間とともに開催されている、さまざまな農家さんとその野菜に出会えることが大きな魅力のファーマーズマーケットです。

 

アクセス

糸島市志摩岐志(きし)の地域は、趣きのある古い民家も立ち並び、穏やかな引津湾にほど近い漁港街です。

「岐志」のバス停からは徒歩約3分の場所で、毎月第1、3土曜日(※野菜の収穫量が少ない時期を除く)にトラキルート野菜市は開催されています。

黄色いフラッグが目印のこちらが会場です。スタイリッシュな外観に、本当にここで野菜を販売しているの?と驚く方も多いはず。

店内は高い天井と差し込む自然光、風通りもよくて気持ちのよい空間です。オープン前から外には行列ができ、開店とともに店内は大賑わい。

味のある古道具や農具がディスプレイされ、映画のワンシーンのような売り場の雰囲気も見どころです。

 

今だけ、の野菜がずらり

11月のこの日のラインナップは、カラフルな根菜類、サラダにおすすめな葉物野菜、熟成が進むことで甘みが増してきたサツマイモやカボチャなど、旬の野菜だけが並びます。

オープンと共に大盛況なこちらの場所ですが、活気がありつつも和やかな雰囲気なのは、あちらこちらでお客さんと農家さんの交流が生まれているから。「この間買ったあのお野菜とってもおいしかった!」「この野菜はこうして食べるのが本当におすすめで…。」そんなやりとりの声が売り場に心地よく響きます。

「冬野菜の葉物も揃ってきましたよ〜!今回のおすすめは〜…。」作物や畑の状況などを知らせる和佳さんの案内を聞きつつあたりを見回すと、じっくり真剣に野菜を選ぶ方ばかり。

2週間後の次の開催日には旬も移ろいラインナップも変化するからこそ、皆さんこの日だけの出会いを楽しんでいるのが分かります。

日々自然と向き合うからこそ敏感に感じる、気候や土壌、虫の変化や野菜の生育への影響。店内で農家さんの生の声を耳にしていると「ああ、そんなに大変なことになっているのか…。」と心配になることもしばしば。

自分ごととして自然や環境のことを考えるきっかけになるのも、この野菜市の特色です。

年々厳しくなっているという栽培条件ですが、売り場に並ぶのはその困難を乗り越えて立派に生育した野菜たち。目にするだけで力をもらえるような美しくたくましい姿ばかりで、惚れ惚れとしてしまいます。

 

余すところなく実りを届ける

この野菜市のリーダーでもある和佳さんが大切に考えているのは、畑からお客さんに届けるまでの間に、もったいない(ロスになる)野菜を減らしていくこと。「マコさん(誠さん)は『今とって!』という野菜の声が聞こえるから。そうしたら収穫するしかないからね」野菜は待ってくれない。

そして一番ベストなタイミングで収穫された野菜を、色々なアイディアで販売する名人でもあるのが和佳さん。

日々日々変わる自然に合わせてゆくことはとても難しい。それでも、受け入れ対応している農家さんたちのなんとたくましいこと。

11月の野菜市3周年の記念イベントでは、通常の商品として販売できない野菜を中心にプレゼントとして提供もされました。

「とう立ち」と言って気温が高過ぎて花芽が伸び食べる葉の部分が少し固くなってしまったもの、一部に虫食いがあるもの、強風の影響で傷がついてしまったものなど。

どれも少しの工夫で美味しく食べられるものばかりで、普段目にする野菜の裏側でいったい廃棄されているものはどれほど多いのだろうと驚きです。

こちらは通常の商品用にはなれなかった人参たち。ダンスを踊っているような個性的なフォルムに、逆に愛着がわいてしまうのは私だけではないはず。

間引き(間隔の調整のために小さいうちに収穫されたもの)の大根。小ぶりで丸ごと使いやすく、葉が瑞々しく柔らかで美味!

こういった、一般の流通では販売されにくい野菜にも出会うことができます。

 

作る人と食べる人の交流から「食を発信する場」を

消費者が知らないことは数多くある。だからこそ、畑とお客さんの距離を近くしていくことが大切そして、農家同士も交流の機会を作ることで、お互い刺激し合い「食を発信する場」として発展させていきたい。そんな場作りを目的として生まれたというトラキルート野菜市。

ここに集う農家さんたちは、いわゆる普通の栽培方法(慣行栽培)ではなく農薬や化学肥料に頼らずに野菜作りをされていたり、マニアックなほどのこだわりがあったり、珍しい品種を作っていたり…。

手間が掛かり収穫量が少なくとも、それぞれが強い想いを持って畑や自然に向き合う、個性豊かな、とっても魅力的で格好良い方ばかり。それぞれの農家さんについても、今後ぜひ取り上げたいと思いますのでお楽しみに。

 

お楽しみのスペシャルゲスト

そして野菜市をよりいっそう彩るのは、ゲストの出店者。和佳さんがセレクトしたイチオシの農家さんはもちろん、買い物の合間のちょっと一息に嬉しいドリンクや軽食、スイーツなど、毎回異なるお店が参加されます。普段からお野菜で取引があったり縁のあるお店だからこそできる、この野菜市のための限定メニューや、旬の野菜たっぷりのコラボメニューも注目です。

ここだけ、今だけ!のラインナップはお客さんにも人気で、こちらでも出店者とお客さん、農家さんを交えての賑わいが生まれ、トラキルート野菜市の輪をいっそう広げてくれています。

以前meets糸島でも紹介された「John lemon(ジョンレモン)」さんなど、糸島の人気店も参加されていました。

 

まずは農家さんとのつながりを

美味しい旬の野菜との出会いはもちろんのこと、作り手との交流を楽しむことで「誰かの作った野菜」ではなく身近な「仲間の作る野菜」になる。そんな野菜を食べ続けられることは日々の食を守られているような、安心感にもつながっていきます。

作り手と消費者の垣根を超えるきっかけとなるのがこの場所。トラキルートのその根っこは、生命力溢れる野菜のように農家さんを中心として気持ちよく広がり、これからも成長し続けていきそうです。

INFORMATION

店名:

トラキルート野菜市(野菜やトラキ)

住所:

福岡県糸島市志摩岐志930

営業時間:

毎月第1、3土曜日11時〜

※売り切れ次第終了
※端境期(野菜の収穫量が少ない時期)は休止となります
※開催日はお店のInstagramでご確認ください

※記事内の情報は記事執筆時点のものです。正確な情報とは異なる可能性がございますので、最新の情報は直接店舗にお問い合わせください。

WRITTEN BY
sachie

sachie

公認ライター

連載賞 2023

連載賞 2023

2023年にメディア上にて、連載記事を担当したライターに贈られる賞です。

2022年秋、糸島移住スタート。 趣味は、散歩散策、呑むこと、細野晴臣。 八百屋業をしていたため農家さんへの尊敬の念が深く、 美味しい野菜が身近にあるのが幸せ。 最近気になるのは森林のこと。 「なんか良いなぁ」という直感を大切に、糸島の人ものことの魅力を掘り下げて行きたいと思っています。