【西区・元岡】糸島半島の老舗酒蔵・浜地酒造「杉能舎」の新たな挑戦とは

【西区・元岡】糸島半島の老舗酒蔵・浜地酒造「杉能舎」の新たな挑戦とは

糸島半島・福岡市西区元岡の「浜地酒造(はまちしゅぞう)」さんは1870年(明治3年)年の創業。
地元の酒米や脊振山系の伏流水で造る銘酒蔵「杉能舎(すぎのや)」ブランドの日本酒で知られています。

そんな老舗酒蔵は、新たな挑戦を続けています。すぐそばにある九州大などと共同で、築150年の旧酒蔵をリノベーションし「酒蔵ガルデン」として再生する計画があるそうです。

酒粕ベーグルや、ドイツが本場のビール「エール」「スタウト」なども販売してきた経験から、ドイツパンの新たな食べ方も提案したいといいます。

挑戦し続ける社長・濱地浩充(はまち ひろみつ)さん(58)に話を聞きました。

25年夏に「酒蔵ガルデン」オープン予定。創業150年以上の老舗酒蔵「浜地酒造」の挑戦

九州大・伊都キャンパスの近く

浜地酒造さんへは、JR筑肥線・九大学研都市駅方面から九州大・伊都キャンパス方面へ向かいます。今回は車での移動。左側にローソンがある「九大新町口」の信号を左折します。

1キロほど進むと、浜地酒造さんの「杉能舎」の看板が見えてきます。駐車場はこの少し手前に約30台分あります。

 

創業150年超。日本酒もビールも楽しめる酒蔵

浜地酒造さんに着くと、木々の緑の間から、木造のどっしりとした酒蔵売店が見えます。創業150年超の伝統ある酒蔵を目の前にして、スッと背筋が伸びます。

訪れた2024年4月20日は「いとしま甘夏エール 1,300円(税込)」の解禁日でした。スーパーなどには卸すことができない規格外の糸島産の甘夏を有効利用するため、その果汁を搾って入れたクラフトビール。

甘夏の皮は酒粕ベーグルに練り込んだり、ジャムにしたりしているそうです。いとしま甘夏エールは限定1,000本のため毎年、すぐ売り切れてしまいます。

9月半ばまで販売する「白ビール 930円(税込)」も出ていました。糸島産の小麦を使ったフルーティーなビールです。いずれも720ミリリットル。濱地さんの長男・真太朗(しんたろう)さん(29)が、ドイツの研究機関でビール醸造を学んだ経験を生かして開発しています。

酒蔵なだけあり、日本酒も並びます。糸島産の酒米・山田錦や夢一献で醸造されており、ビールも日本酒も各種品評会で金賞や入賞を受賞するほどの評価を受けています。

 

明治期の旧酒蔵を「酒蔵ガルデン」に

浜地酒造さんの母屋・酒蔵売店の隣には資料館などになっている旧酒蔵があります。この酒蔵がドイツにヒントを得た「酒蔵ガルデン」に生まれ変わる計画があることを、社長の濱地さんに教えていただきました。

木造の旧酒蔵には明治時代と大正時代にできたものがあり、大正の方は解体して緑豊かな庭園にするそうです。明治の旧酒蔵は壁などを壊して骨組みだけにした後、耐震化しリノベーションする計画です。これは、環境をテーマとした建築を実現する九州大学などとの共同プロジェクト。24年8月から工事に入り、25年夏に完成の予定だそうです。

リノベーション後は1階にパン屋やレストランが入る構想です。「レストランでは、地元の規格外のトマトやイチゴを食材にしたり、市場に出荷できなかったアジやサバなどの地魚のフィッシュ&チップスを出したりできないかと考えています。」と濱地さん。

レストランは100人が入れるスペースができるそうで、濱地さんは「25年秋に九州大学で日本建築学会の大会が開かれます。酒蔵ガルデンが、その会場のひとつになると思います。」と話します。客室を仕切れば地元の人たちの寄り合いや絵画展などを開ける小スペースにもなるそう。「九大の学生さんや留学生さんも集う、公民館のような場所になればいいですね。」と濱地さんの夢は広がります。

 

酒粕ベーグルで知られるパンにも新たな動き

浜地酒造さんは、酒粕を有効利用したパン「酒粕ベーグル」でも知られていて、パン酵房(こうぼう)には、いろんな種類が並んでいます。

実はこのパンに、新たな動きがあるそうです。濱地さんの三男・真範(まさのり)さん(23)は、23年4月からドイツでパンづくりの修業中で、過去にはプレッツェルで知られる「サイラー」(福岡市南区)や島根県、千葉県のパン店でも腕を磨いたことがあります。

ドイツの人たちは1週間くらい日持ちがする大きなドイツパンを買うことが多いとのこと。それを少しずつ切って、何かをのせたり挟んだりして食べるそうです。濱地さんは「このドイツの食習慣を日本でも紹介できないかと考えています。糸島産の野菜やハムを挟んで食べたらおいしいでしょうね。」と思いを巡らせます。真範さんは24年末に帰ってくる予定で、「酒蔵ガルデンのパン店で腕を振るってほしいですね」と濱地さんは期待します。

 

次男の真澄さんは阪神タイガースの投手

濱地さんの次男の真澄(ますみ)さん(25)はプロ野球セ・リーグの阪神タイガースの投手。阪神ファンの方なら知っていることでしょう。私も阪神ファンです。

福大大濠高(福岡市)から16年のドラフト4位で入団。22年は52試合に登板し防御率1.14の好成績でした。23年は故障もありましたが、24年のシーズンは巻き返しを期待したいものです。

濱地さんは「24年の正月は夫婦で2、3日帰省してきました。すぐに自主トレをするために帰りました」と話します。濱地さんも昔から阪神ファンです。酒蔵売店には真澄さんのコーナーもありますよ。

ちなみに真澄さんは、浜地酒造さんの「あまざけ」がお気に入り。甘酒は栄養が豊富で「飲む点滴」とも言われます。

 

それぞれに伝統を受け継いで新たな時代へ

浜地酒造さんでは「酒蔵ガルデン」の準備を進める社長の濱地さん、ビールを手がける長男・真太朗さん、パンの研究に没頭する三男・真範さんが、それぞれ老舗の伝統を受け継ぎつつ、新たな時代への道を切り開こうとしています。阪神の投手の次男・真澄さんも含めて、挑戦を続ける姿勢に敬意を表したいと思いました。(年齢と肩書は2024年4月20日現在)

INFORMATION

店名:

浜地酒造「杉能舎」

住所:

福岡市西区元岡1442

電話番号:

092-806-1186

営業時間:

酒蔵売店 9:00~18:00
パン酵房 、ビール工房 9:00~16:00

定休日:

パン酵房 、ビール工房は月曜日
酒蔵売店は正月以外は営業

※記事内の情報は記事執筆時点のものです。正確な情報とは異なる可能性がございますので、最新の情報は直接店舗にお問い合わせください。

WRITTEN BY
のんちゃん

のんちゃん

現役ライター

ライター歴27年の50代男性。フルマラソン出場16回(うち福岡マラソン5回)。ソフトボールも趣味で、おじさんチームの監督をしている。糸島の野菜や魚介類の直売所や、海鮮丼などが食べられる飲食店が大好き。糸島半島の古墳や遺跡、神社にも興味がある。