福岡県糸島市志摩師吉にある工房「杉の木クラフト」さんにお邪魔しました。
「杉の木クラフト」さんでは、杉をメイン素材として器から家具までの生活道具を作っています。
塗装は漆を使用し、接着も自然素材にこだわり、長くお使いいただけるものづくりを心掛けているとのことで、作り手の溝口様にお話をうかがいました。
ー自然に還る。なにも難しいことじゃない、全てがシンプルに出来ている。
「杉の木クラフト」という工房
溝口さんはここ糸島の地で、杉の木クラフトという工房を構えています。元々は、大分県にある林間産業で働いていたそう。そこで、木工品を作る部署で日田杉を扱い始めました。
溝口さん「2003年に木工品の部署を閉じることになりまして。そこでそのまま私が引き継いで、杉の木クラフトができました。」
その後しばらくして、縁があってここ糸島の地に移住。杉の木クラフトを製作する工房も、巡り合わせたように物件が決まり、現在に至っていると言います。
溝口さん「運がいいことが連続して起きる事ってなんかありますよね。」
すべて自然由来にこだわる
杉の木クラフトのラインナップである「うるしの弁当箱」と「うるしの木の葉皿」を見せていただき、その特徴を教えてもらいました。
「うるしの弁当箱」は曲げわっぱという古くから愛用される日本の伝統工芸品。杉や檜の薄板を、円筒形に加工させており、一昔前の庶民の弁当箱に多く愛用されていました。実際に手に取ると、ものすごく軽いです。
溝口さん「軽いってことは、中にたくさんの空気を含んでいるんです。つまり、断熱性に優れている。かつ材料は木なので、殺菌効果もありご飯が傷みにくいです。」
断熱性に優れ、さらに木の性質である調湿効果もあります。ご飯の湿気を弁当箱自体が吸収するため、ちょうどよく保たれるそうです。
続いて、「うるしの木の葉皿」を見せていただきました。こちらは、いくつもの杉を寄木の様に組み合わせて貼り合わせて葉っぱのようにデザインされています。日田の木工品加工時代に、師匠より譲り受けたそうです。
「接着剤も自然の物ですか?」
溝口さん「弁当箱含め、塗装と接着剤は漆を使っています。漆の小麦を混ぜて接着剤として用い、昔からの手法です。」
水や油汚れにも強く、さらにはアルコールにも強いそうです。さらに、塗装した面は抗菌、殺菌作用があり、菌や虫などの繁殖を防ぐ働きもあります。
溝口さん「そして、漆の特徴でもあるんですが、接着する時は湿気を与えて固めるんですよ。」
…?
溝口さん「イメージでいうと、乾かすのではなく、固めるんです。」
なんでも漆は樹液である為、空気中の水分の中にある酸素を含むと液体から固体に変わるといいます。
人間で例えると血液のようなもので、凝固作用があるわけです。接着の際は、70〜80%の湿度で固めていくとのこと。なんとも面白い性質です。
こうした背景から、日本のような湿気が多い場所ではとても相性がいいとのことで、古くから生活において、愛用されるわけですね。
自然由来の背景
溝口さんは一時期、ウレタン塗装も行っていたといいます。
しかし、人が口にする物にそういった化学物質を使うのは良いのだろうかと思い悩みました。
溝口さん「商品を使っていて、気分が悪くなるんです。シンナーも使いますし、作業中に頭が痛くなる。ずっとモヤモヤが残っていました。やっぱりものづくりである以上、作っていて気持ちよくないとダメですね。」
そう思い、昔の生活様式を調べて今に至ったと言います。
すべて繋がっている
溝口さん「自然の物を食べて、それを排泄して、木々の肥やしになる。すべてうまく回るように出来ていて、繋がっているんです。いたってシンプルですよね。」
「杉の木クラフト」さんの実際の商品は“糸島くらし×ここのき”さんやECサイトなどで購入ができるとのこと。また、ずっと長く使っていけるように、塗り直しや修繕も行っています。
他にも公式HPにラインナップがあるのでぜひ覗いてみてください。糸島に来た際は取扱店舗に寄って、杉の木の匂いを感じてみてください。
一目惚れすること間違いなしですよ。
店名: 杉の木クラフト 住所: 福岡県糸島市志摩師吉1015-2 電話番号: 092-327-5040 営業時間: [月・火・木・金]9:00〜17:00 定休日: 水・土・日・祝 ※記事内の情報は記事執筆時点のものです。正確な情報とは異なる可能性がございますので、最新の情報は直接店舗にお問い合わせください。INFORMATION