みなさんはやきものと聞いて、何を思い浮かべますか?
伊万里焼、有田焼、波佐見焼など、イメージするやきものは人それぞれでしょう。
筆者は今回、芥屋にある糸島唯一の登り窯「唐津焼 高麗窯」さんを探訪。
そこには、筆者にとって新鮮な驚きと発見が数多くありました。
目次
古唐津に興味を抱き、クリーニング屋から窯元へ。見ているだけで楽しくなる、多種多様なやきものが並ぶ「唐津焼 高麗窯」
こちらの記事は『やきもの好きにはたまらない、芥屋にある糸島唯一の登り窯「唐津焼 高麗窯」を探訪!<③技法編>』の続きになります。
今回は、高麗窯さんの登り窯を実際に見せていただきました!
窯見学に出発!
登り窯は、やきものが販売されている店舗の外に出て、少し歩いたところにあります。
筆者は窯主の古家さんに連れられて、糸島で唯一という登り窯を見に行きました。
途中には、やきものに使われているという伊万里、武雄の土が。
伊万里、武雄はどちらも佐賀県にあるので、糸島や唐津からはかなり近いところにあります。
古家さんに教えていただいたから「やきものに使っている土なんだ」とわかったものの、普通に歩いていたらただの土としか思えなかったでしょう。
窯に向かう途中で、ちょっと変わった模様の石を見つけました。
「これは何ですか?」と尋ねてみると、「先代が集めていた石のコレクションの1つですね。犬みたいな模様でしょ?」と古家さん。
登り窯と初対面
少し前に目にした「犬の模様をした石」のことを考えながら歩いていると、いつの間にか登り窯の前に辿り着いていました。
こちらが「胴木の間」と呼ばれる大きな窯で、ここにはやきものは入れずに、薪だけを焚べるとのこと。
窯焚きの際には、まずこの胴木の間から焚きはじめます。
窯全体の温度を徐々に上げたり、窯の湿気を取ったりするためだそうです。
続いてこちらが、左手前から「一の窯」「二の窯」「三の窯」。地形が少し斜めになっています。
手前から奥にかけて上っているので「登り窯」というそうです。
窯焼きに欠かせない道具たち
登り窯で器を焼く際には、さまざまな道具が必要になるとのこと。
1つ1つ、教えていただきました。
こちらの写真の中央にあるのが、支柱。画面上側や下側に見える板と一緒に組んで棚を作るのだそう。
この棚の上に、これから焼く器を並べていくというわけです。支柱の段数は焼く器の種類にもよりますが、基本6段前後で棚を組むそう。
窯の中に器を並べ終えたら、レンガを積んで窯の入り口をふさぎます。
一度ふさいでしまったら、窯の中の温度を確かめるためにレンガを崩して中に入る、というわけにはいきません。
そこで活躍するのが以下の2種類の道具たち。
まずはこちらが、レンガの隙間に埋め込んで使う、のぞき穴。
色合いといい形状といい、可愛らしい姿をしていますね。
続いてこちらが、窯の中の温度に応じて白い爪が曲がるという不思議な道具。
「ゼーゲルコーン」と呼ばれているそうです。
お部屋のインテリアにも使えそうな、オシャレな見た目ですね!
年に2回の窯開き
高麗窯さんでは、春と秋の年2回、窯開きをされるそうです。
窯に器や支柱を並べる「窯詰め」に約3日かかるとのこと。
その後の工程は以下のようになっています。
胴木の間:12~13時間
1の窯:2~2時間半
2の窯:2~2時間半
3の窯:2~2時間半
窯で焼く時間の合計は、だいたい20時間くらいになるのだそう。
ちなみに、窯の中の温度は1の窯、2の窯、3の窯ともほぼ変わらないようです。
内壁はピカピカ!
「器を焼いているときには見られない景色だ」と感動しながら窯の中をのぞき込んでいると、ふと内壁がピカピカ光っているのに気がつきました。
古家さんが「窯の中でも手前の方は、窯焚きのときの灰が付着して、溶けて、それを繰り返してピカピカになっています」と教えてくれました。
ちなみに、窯の奥の方は火元から遠いために、ピカピカにはなっていませんでした。
西方沖地震の影響を受けて
古家さんのお話を聞いている中で、筆者は窯の外壁に妙なものがくっついているのに気がつきました。
窯の外観に比べると無機質な感じがあって、何となく不自然な見た目になっています。
いったいなぜ、こんなものを付けているのでしょうか?
古家さんに疑問をぶつけてみました。
すると「20年近く前に西方沖地震っていう地震があったでしょう。そのときに窯が崩れて大変だったから、今度地震が来ても崩れないように、窯を補強しています」と、古家さん。
たしかに窯が崩れてしまっては元も子もありませんよね…。
さらに古家さんは、窯の入り口上方を指さして「ここもね、西方沖地震のあとに補強したんですよ。もともと窯の入り口のアーチは一重だったけど、二重にした」と教えてくれました。
ここまで窯を見せていただく中で、筆者は「窯の作りがきれいだな」と思いました。
とても素人が作った窯には見えなかったのですが、古家さんに尋ねたところ「この窯はうちの両親が自分たちで作ったものですよ」と。
器を作るだけではなく、糸島唯一の登り窯まで手作りされるなんて、その技術力の高さには驚くばかりです!
何か買いたいなあ…
ここまで古家さんに登り窯の見学をさせてもらいました。
ちなみに、登り窯の見学は誰でも無料でできるとのこと。興味のある方はぜひ、「唐津焼 高麗窯」さんの窯を見学に行ってみてください!
さて、登り窯を後にして店舗に戻ってくると、たくさんの器たちが筆者を出迎えてくれました。
「ここにあるのはさっきの登り窯で時間をかけて焼き上げられた器たちなんだよなあ…」
そう思うと、身体の内から「何か器を買いたい」という衝動が湧き起こってきました。
人気商品は?
古家さんに人気商品を尋ねてみました。
年中人気があるのが、お茶碗やコーヒーカップ。夏にはビールグラス、冬は取っ手がついたスープカップが売れているようです。
筆者が訪れた時期は12月の上旬でしたが、この頃には焼酎を飲む杯も人気があるとのことでした。
お店に器を買いにくるお客さんの目的としては、ご自分用や飲食店の器、プレゼントなどがあるようです。
いざ購入!
高麗窯さんで売られている器の値段は、1,000円~60万円までさまざまです。
しばらく店内をうろうろと歩き回っていましたが、ふと足を止めた瞬間に目に入った器の模様があまりにも見事だったので、即座にその器に決めました。
お値段を見ると5,000円(税込)。少し高いですが、ひと目見て気に入ったなら、買う以外の選択肢はありません(笑)。
お店で撮った写真が、こんな感じ。
まるで絵画のような、魅力的な模様が入っています。
古家さんに「この器でお願いします」と言うと、何やら面白そうな紙で包んでくれました。
はじめに見たときはただの紙に見えたのですが、少し引っ張ると蜂の巣のような切込みが入った紙に大変身。
「これは何ですか!?」と驚きを隠せない様子で尋ねると、古家さんは「これはハニカムクッションペーパーだよ」と教えてくれました。
もともとはプチプチしたシートで器を包んでいたそうですが、そちらは石油製品だったために、昨今の情勢を鑑みて紙製のハニカムクッションペーパーに変えたそうです。
以下の4枚が、家に持ち帰って撮った器の写真になります。
まずこちらが、器の表側(火に対して表側)の写真。ナマコと辰砂(しんしゃ)の両方の変化が出ていますね。
続いてこちらが、器の裏側(火に対して裏側)の写真。
こちらはほぼ薄ピンク一色で、辰砂が表れている状態です。
そしてこちらが、器の底面。
今川焼のような色をした渦巻きが可愛らしいですね。
器を上からのぞくと、こんな感じに見えます。
どこか葛飾北斎の「富嶽三十六景」を彷彿とさせる、味のある模様ですよね!
「窯元前」の由来
取材を終えて店舗を出たあとで、古家さんはお店のすぐ横にあるバス停まで案内してくれました。
そのバス停には「窯元前」と書かれています。
古家さんによると、もともと近くにNTT(当時は電電公社)の社宅があったので「無線前」という名前だったとのこと。
しかしその社宅がなくなり、付近には「唐津焼 高麗窯」さんがあるのみとなったために、先代の窯主が昭和バスに「変えてくれ」とお願いして変えてもらったそうです。
バス停の名前まで変えてしまうなんて、面白いですね!
見て楽しい!買って嬉しい!
ここまで、高麗窯さんの登り窯を見学した様子、購入した商品などについてご紹介してきました。
さらに、前回までの「基本情報編」「様々なやきもの編」「技法編」ではそれぞれ、お店の基本情報や作られているやきものについてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか。
古家さんの先代がクリーニング屋から窯元になってから、今年で51年。
「窯元前」のバス停の横で、今日も個性的な器たちがあなたを待っています。
見て楽しい、買って嬉しい。
そんな「唐津焼 高麗窯」さんに、ぜひ一度遊びに行ってみてください!
INFORMATION
店名:
唐津焼 高麗窯
住所:
福岡県糸島市志摩芥屋157
電話番号:
092-328-2353
営業時間:
10:00〜17:00
定休日:
火・水曜日
一人当たりの予算:
¥1,000~
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