九大のスターを探せ!|食卓を研究する「パスタ場こあじ」シェフ——大屋太亮<後編>
九大のスターを探せ!
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九大のスターを探せ!|食卓を研究する「パスタ場こあじ」シェフ——大屋太亮<後編>
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「meets糸島」では、糸島の土地やそこで暮らす人々の魅力について日々発信しています。
そんな糸島にはもう1つの表情があります——それは、”九大生(九州大学の学生)の生活拠点”としての糸島。
「糸島を愛するみなさんに九大生の魅力を知ってもらいたい!」
「九大生と糸島の結びつきをもっと深めたい!」
糸島と九大生の素敵な化学反応を期待して、活躍する九大生にインタビューを行っていきます。
今回は食卓を研究する「パスタ場こあじ」のシェフ、大屋太亮(おおや たすけ)さんを取材しました!
目次
食卓を研究する「パスタ場こあじ」シェフ━━大屋太亮
前編では「パスタ場こあじ」ができた背景や、実際にお店に行ったレポをご紹介しました。
後編では、そんな大屋さんが「食卓」に関心を持つようになったきっかけやこれからの夢、最近始めたという「ただ、タダ飯を食う会」についてお聞きします!
ぜひ最後までお楽しみください♪
忘れられないネギ塩牛タンの味
——大屋さんは「食卓」について研究されていますが、興味を持ったきっかけは何だったんですか?
僕、実は1年浪人して大学に入ってるんですけど。
浪人が決まってすごく落ち込んでいたとき、父が焼肉を食べに連れて行ってくれたんです。
僕の父は普段は、自分の仕事の話をする人じゃないんです。
でもその日だけは、今までの仕事で失敗した話などを赤裸々に聞かせてくれたんです。
「それに比べたら、お前の失敗なんて大したことないだろ」って。
そのときちょうど、ネギ塩牛タン食べてて…僕、その味を忘れられなくて。
あの特別な時間は、何に由来していたんだろう?って。
僕はそれを、「食卓」という特別な場所の作用なんじゃないかなって仮説を立ててるんです。
それが僕が「食卓」というものに向き合おうと思ったきっかけでした。
それに、この「食卓」に関して研究している研究者って実はあんまりいないんです。
栄養学的にとか、マナー的にとか、そういうのはあるんですけど。食卓という環境でのコミュニケーションを専門としている人っていうのはなかなかいないんですよね。
だからこそ解明したらおもしろいんじゃないかなと思ってて。やりがいがありますよね。
お母さんに褒められたことで料理が好きになったり、お父さんとの不思議な体験がきっかけで食卓に関心を持ったり…大屋さんにとって「家族」はキーワードのようですね。
ただ、タダ飯を食う会
そんな僕の関心に1番近い活動と言えば…今、「ただ、タダ飯を食う会」っていうのを企画してるんです。
ひとり大人の方にお金を出していただいて、僕がご飯を作る。そしてそれを本当に「タダ飯を食う」ためだけに集まった人たちみんなで食べるっていう会。
僕はこの活動で、学術的な調査もしたいなって思っていて。
「食事」が「食卓」に昇華するにはどんな要因が絡んでいるんだろう?っていうことを、客観的に見たいんです。
最初は本当に「ただ、タダ飯を食う」だけかもしれないけれど、それ以上の意味が生まれる瞬間が見られるかもしれないってことですね!
友達も来てくれるんですけど、本当は、参加者が全員知らない人とかでやってみたいんですよね。(笑)
5歳くらいの男の子から、おじいちゃんおばあちゃんまで、みたいな。
同じご飯を食べた瞬間に、そこに何か仲間意識のようなものというか…とにかく、何かが生まれるんじゃないかなって僕は思ってるんです。
だから、そういうものが生まれやすい場所を人為的に設定してみる。そうしたら何かがわかるんじゃないかなって。
人との縁で生きる僕と、縁のある食卓。
——この活動にお金を出してくれている大人の方は、どういう方なんですか?
彼はとある九大出身の経営者の方で…お金持ちの方です。(笑)
僕は「熱風寮」っていうシェアハウスに住んでいるんですけど、そこの代表をしている大堂さんっていう方が糸島で顔が広い方で。
大堂さんにくっついてまわっていってたら、その方と出会いました。
人生の先輩だし、かつ自分の周りにはなかなかいないタイプの人で。
僕の話を聞いてもらいたいなって思って、1回しか会ったことないのに、すぐ「飲みに行きましょう!」って誘いました。(笑)
「こういうことをやりたいと思ってるんですけど、何せお金がなくて…。」みたいなことを話してたら、「じゃあ、一緒にやろう。」って言ってくださって。
そうして「ただ、タダ飯を食う会」が始まりました。
大屋さんって、「人との縁で生きてる」って感じがしますね。
本当にそうです。
よく「大屋さんってすごい」って言ってもらえるんですけど、僕がすごいわけじゃなくって。周りの人のおかげなんですよね。
そうそう、そういえば「縁」っていうのもキーワードなんです。
食卓についての先行研究が少ないってさっき言ったと思うんですけど、その数少ない研究の中に、「縁食」ってものがあるんですよ。
「共食」とか「孤食」っていう言葉があるじゃないですか。あれって、どっちもメリットとデメリットがあるんです。
それらのいいとこどりをしたようなものが「縁食」なんです。
自分が人との縁で生きているっていうことと、そんな僕が食卓っていう縁に関係があるものについて研究しようとしていること。
…やっぱりなんか不思議な親和性があるなって思うんですよね。
自分の手で、人が幸せになるお手伝いをしたい。
——大屋さんはお店もやっていますし研究にも関心があるようですが、将来はどういった道に進みたいとかありますか?
僕のやりたいことは大きく2つあります。
1つは、食卓のポテンシャルを最大化し、かつマイナスな部分を最小化して、より住みよい社会をデザインすること。
もう1つは、食卓を通して自分自身が楽しく生きること。
「食卓は社会を生み出す場所なのではないか」という仮説を持っているので、それが本当かどうかも突き詰めたい。これが学術的な目標ですね。
——それでは、将来は研究者に?
うーん、僕は性格的にひとつのことを長く緻密にやっていくのは向いてないかもしれないです。(笑)すぐ新しいことに飛び移っちゃうので。
研究者に将来なるというよりは、この4年間で勝負をつけたいという気持ちです。
理論より実装の方により興味があるのかもしれないです。
自分の手で人が幸せになるお手伝いをしたいんですよね。
今の段階で1つに道を絞っているわけではなさそうですね。これからも縁のある方へ進んでいってほしいです!
そういえば「パスタ場こあじ」の方は、12月は休業して1月にリニューアルするんです。
デザインを勉強している友人がいるんですけど、その子に僕の店のトータルブランディングをお願いして、お店のデザインとかロゴとかにもこだわりたいなって。
あとはインスタグラムでの広報などにも力を入れながら、より農家さんの哲学が伝えられるようにしたいですね。
縁を大切にしながら、食卓に向き合っていく
——今日はありがとうございました。最後にひとことお願いします!
「食」というものが若い人たちにとって、少しでも生活の中で光り輝くものになってほしいと思って活動しています。これからも応援よろしくお願いします!
家族との食卓での思い出から食卓に関心を持ち、研究を進める大屋さん。
その彼もまた、誰かにとっての大切な「食卓」を作っているのかもしれません。
人との縁に感謝をしていると語る彼。
しかし縁はもともとそこにあったわけではなく、大屋さん自身が作り出していったものなのではないでしょうか。彼のあたたかい人柄に触れて、そう思いました。
これからも彼の活躍が楽しみですね!
大屋太亮さんの応援、よろしくお願いします!