meets vol.9|株式会社やますえ社長 馬場孝志
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meets vol.9|株式会社やますえ社長 馬場孝志
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糸島で活躍するクリエイターや事業者など、町にとってポジティブな影響を与える人へのインタビュー企画です。
心ある人の考えや取り組みを発信することで、糸島を今よりもさらに好きになってもらおうとお話を伺っています。
第9回目となる今回は、明太子を製造・販売している「やますえ」の社長・馬場孝志さん。
生まれ育った糸島で明太子を作る理由や地元への愛など、熱い思いをじっくりと語ってもらいました。
meets vol.9|株式会社やますえ社長 馬場孝志
———全国で愛されているやますえさんの明太子。作るうえでのこだわりを教えてください。
私達の明太子は、糸島の老舗酒造「白糸酒造」さんのお酒と老舗の「カノオ醤油」さんの醤油を使い、糸島の素材を活かして作っているのが特徴です。
原料はスケトウダラの卵で、アメリカやロシアのものを入札で買い付けをしますが、自社の規格に合う良質な卵を基準に調達します。
白糸酒造さんのお酒は、雑味がなくふくよか。コクと深みのあるカノオ醤油さんの醤油と合わせてオリジナルの調味液を作り、そこに魚卵を漬け込むことで美味しい明太子が完成します。
手間暇を惜しまず、丁寧に作るというのもポイントです。
糸島で明太子工場を創業し、今年で12年目となります。
やますえの明太子がここまで知られるようになったのも、地域の方々が遠方の親戚やお知り合いに贈答品としてご利用いただいているおかげです。
こうしたあたたかい環境で明太子を作らせてもらえていることに、本当に感謝しています。
———直売所では、明太子以外にもいろいろな商品を販売していますね。
明太子を加工した人気商品のいか明太に、アジフライや鯛めしの素などもありがたいことにご好評いただいています。
ご存じない方もいるかもしれませんが、糸島ほど水産資源が豊富な土地はありません。
日本一の漁獲量を誇るマダイやカキ、サワラ…季節によってさまざまな魚介類が揚がります。
魚だけでなく、モズクなどの海藻類や地元で作られた野菜、フルーツとおいしいものに溢れている、それが糸島のいいところです。
私達はそうした資源を活用し、そのおいしさをもっと広げるため糸島の企業や学校と協力して商品開発に取り組んでいます。
直売所やオンラインストアでは、そのつながりで生まれた自慢の商品を販売しています。「だしスープっ鯛!!」という鯛だしも代表的な商品のひとつです。
はじめは、糸島天然真鯛の身を製品化する際に残ったアラや骨からエキスを抽出し、真鯛本来の旨みが楽しめる冷凍だしとして開発していました。
しかし、冷凍ということから一般のご家庭では使いにくいという点もあり常温化へ。
その際、博多女子高校のみなさんからネーミングやパッケージ、売り方、レシピの開発などのアイデアを頂き、発売を進めることで今までにない販路が広がりました。
———社長に就任されるまで、さまざまな職業を経験されたとか?
高校卒業後は瓦職人として働き始め、その後、冷凍食品の会社に就職。さらにその後は、トレーラーの運転手としても働きました。
運転手時代に前社長と出会って声をかけていただき、営業の仕事に携わることに。それから18年後の36歳の時に社長に就任することになり、今に至ります。
もともと魚には興味があり、糸島に拠点を移すにあたって二丈の「福ふくの里」へ週末は通い、1年間に揚がる魚の種類や旬の魚のさばき方について5年間修業しました。
漁師さんの船に乗ってお手伝いさせてもらった時期もありますよ。この経歴を話すと、皆さん決まって驚かれます。
———今も市場に自ら買い付けに行かれるそうですね。馬場社長の原動力は、どこから来るのでしょうか?
まずは魚が好きっていう気持ちですね。なんだかんだ言って28年も魚に携わってきたので、魚について考えない日はありません。
そして、ひとえに糸島と会社を良くしたい!という思いです。「糸島の発展が会社の発展」、いつもそう考えています。
———明太子作りを始めたきっかけについて教えてください。
やますえはもともと、仕入れた魚や魚卵を海外で加工し、国内で販売するという卸売がメインの会社でした。
私自身も、以前は「ほっともっと」さんなど大手企業のバイヤーとして世界中を飛び回り、365日魚と向き合う日々でしたよ。
そのような中、ある時からサバやサンマなど、取り扱う魚の漁獲量がどんどん減ってきていることに気付きました。
ちょうど30年前くらいでしたかね。原因は地球温暖化など、環境の変化による影響です。
特にサンマは近年、漁獲量の減少によって高級魚になっています。当時の現場では、その予兆のようなものが見え始めていました。
「このままでは事業を続けるのが難しくなる」そう感じて、卸売りのノウハウをいかしながら安定して製造・販売ができる明太子のメーカー業に方向転換したのです。
———拠点を糸島に移し、工場を新設。思い切った決断だったのでは?
実は、私、昔は糸島が大っ嫌いだったんです。
子どもの頃の糸島は、田舎でなんにもない場所という印象。虫取りぐらいしかやることがなくて、夕食は毎晩魚。外食といえば、いっつも「牧のうどん」でした。(笑)
早くこんな田舎から出たいと、そればかり考えていましたよ。
でも、いざ糸島を離れて世界を見て回るなかで、ふと振り返ってみると自分の生まれ育った場所がどれほど豊かな場所だったのか気付かされました。
「眠った資源を掘り起こし、このまちに恩返ししよう」そんな思いに駆られ、糸島に工場を建設しました。
うちで働いてくれているのは、ほとんどが地元の人。だから本当に「糸島メイド」なんです。
私とっては、糸島で糸島の人が作る、それがとても重要なのです。
立場や役職に関係なくお互いをリスペクトし、アイディアや感じていることをなんでも言える、そんな風通しの良い職場を目指しています。
———これからの展望について教えてください。
私には夢があります。それは糸島に関する食品や商品を集めた市場を作ることです。
ただの市場ではなく、それぞれの特徴や作り手の思いなど情報を広く伝えることのできる市場にしたいと思っています。
その前段階として、これまで「食taku市」や「GW糸島屋台フェス」といったイベントを開催してきました。どのイベントも多くのお客様でにぎわい、糸島の注目度の高さを再確認しましたね。
前原ICから降りてすぐの場所を選んだのも、市場の構想があったから。
観光で糸島を訪れた人たちに市場に立ち寄ってもらい、やますえを入口に糸島の素晴らしい食材や商品に出会って欲しいとの思いです。
糸島市食品産業クラスター協議会や糸島市観光協会の活動も、まさにその目標を叶えるために必要な行動です。
生産者や事業者が手を取り、お互いにどうすればさらに良くなるのか一緒に考えて成長していく。
新しいものを生み出すだけでなく、人口減少や第一次産業の担い手不足など近々の課題にも向き合っていく必要があります。
私自身もInstagramやYoutubeなどSNSを使った情報発信に力を入れているところです。
旬の食材を通して生産者の方々の生きた声をその土地から届ける、といったタイムリーな発信を心がけています。
今年の秋に始まるNHKの朝ドラは主人公が糸島出身という設定だそうで、放送が始まればまた糸島に興味を持ってくれる人が増えるのではないかと期待しています。
———糸島をよりよくするために、馬場社長が考える今必要なことはなんでしょうか?
糸島は、すでに発展のさ中にあります。新しい企業や事業者がたくさん入って来て、なにも無かったあの頃とは比べ物になりません。
また、糸島への移住者の方も年々増加しています。
ここで生まれ育ち、その良さを1番知っている地元出身者と共に先頭に立って糸島を引っ張っていくためにも、地域に根差した活動を通じて事業者様と繋がっていくことが大切だと思っています。
糸島の本当の良さや温かさ、地産地消の重要性を伝えて行くことが大事なのです。
地元民としての誇りを持ち、先人達が守り続けてきた糸島の「よかとこ」を次の世代へつなげていく。それこそが私達の役割だと思っています。
INFORMATION
店名:
株式会社やますえ 直売所
住所:
福岡県糸島市多久523-1
電話番号:
0120-417-511
営業時間:
10:00~17:00
定休日:
毎週木曜日(祝日を除く)
一人当たりの予算:
~¥1000
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